ASIAN MEETING FESTIVAL 2019

Posted on 2019/07/12

【観たり聴いたり】

JIROKICHIでのことはリアルタイムにInstagram (@jirokichimusic) へ投稿しています。ここでは、余所で観たり聴いたりしたことを綴っていきます。

7月某日 東京で開催された ★[アジアン・ミーティング・フェスティバル2019](AMF)のday3(コンサート#3)へ行ってきました。今年で14年目となるこのフェスは、アジアの音楽家による実験音楽・即興演奏を通じた新たな音楽表現の追求とコラボレーションモデルの創出を目的に、これまで日本各都市、シンガポール、マレーシア、台湾などで開催されてきました。

遡ること2005年 ★音楽家・大友良英さんが当時台湾で観聴きした独特の新しい音楽、面白い音楽シーンが東アジアの各地域で出来つつあることを感じ、彼等をまずは日本でも紹介したいという思いから始まったそうです。初回の開催は新宿PIT INNでの3daysだったようです。当時のことは ★大友さんが総括としてまとめているテキストが残っています。そこには、JIROKICHIにもたまに遊びにきてくれるコプチャンチョンゴル(韓国で活動する日本人による大韓ロックバンド)の佐藤行衛さんの影響もあったとあるから驚きました。今度会ったら話をきいてみよう。

さて今年のAMFには、バンコク、ハノイ、ジョグジャカルタ、シンガポール、台北、コチからの音楽家に加え、日本からも気鋭のアーティスト陣がゲスト参加。会場のホールに入ると、そこは360度ステージで、中心にも楽器が置いてある。観客は、どこに居たらよいのか戸惑うも、次第に馴染んでいく。薄明りのなか、音の鳴る方、パフォーマーがいる方へ自由にゆっくりうねりとなって静かに移動する人々。床に這う無数の配線、無防備なスピーカーや楽器の配置に、観客たちがぶつかったり転んだりしたら……と思ってしまうも、それは杞憂に過ぎませんでした。それよりもこのユニークな状況を楽しむことだ。

どの音楽家も素晴らしく、目と耳を奪われていくものの、特に印象深かったのは、ハノイから参加の NGO Tra My/ゴー・チャー・ミーさんの演奏。ベトナムの伝統民族楽器「ダン・バウ」を初めて目にする。奏でる姿は、テルミンを弾いてるようだけど、よく見ると、母体の箱に弦が一本張られている。後に奏法を調べてみると、音はそのたった一本の弦から弾かれたハーモニクス(倍音)を、左手のお玉杓子の棒のようなものを揺らし音程の変化をつける、というものらしい。

それともうひとり、その佇まいと音の美しさ(不思議とも…)に魅かれたのは、台北から参加のSheryl Cheung/シェリル・チャンさん。道教思想(Taoism)からの影響を身体テクノロジーとともに探求するアート・プロジェクト ★「lololol.net」の発起人のひとりだとか。どんな活動か気になります。

全体で90分ほどのコンサートでしたが、最初から最後まで驚きが絶えませんでした。

最後、会場を後にするときふと思ったのは、なぜ、アジアン・ミーティング・フェスティバルなのに、会場がドイツ文化会館なのだろうか? 単純にここの施設が素晴らしいものだったのか、それともアジアの政府機関にはまだこういった文化を応援する施設や土壌が少ないのかなぁ、と。主催の ★国際交流基金アジアセンターでは、メディアート交流事業というステキな取り組みをされているようです。

まだまだ近くて遠いような、遠くて近いような、アジアの音楽家(ミュージシャン)との交流がもっと広まりますように。

bookmark:

★アジアン・ミーティング・フェスティバル2019
★音楽家・大友良英さん
★大友さんが総括としてまとめているテキスト(2005.10)
★lololol.net
★国際交流基金アジアセンター  メディアアート交流事業